長期インターンで得られる成長を、「構成主義的発達論」で評価してみよう
夏真っ盛り?ですが、皆さん長期インターンを検討されていますか?
就活本番を控え、1ヶ月以上を費やすような大きな経験となる長期インターンでは、
就活に箔を付けるためというよりは自分自身の成長のために参加を考えている人が多いかと思います。
中には単位のためと言う方もいるかもしれませんね。
さて、そんな長期インターンで得られる成長ですが、「どうなれば成長したことになるのか?」という質問に対して答えるのはとても難しいです。
しかし、一方で長期インターンで成長が謳われることはままあることです。
今回の記事では、この「成長をどのように評価するか」という判断に使えるフレームワークの一つとして、発達心理学の一分野である成人発達理論(構成主義的発達論)を簡単に紹介します。
厳密に言うと、いくつかある成人発達理論の中から、ロバート・キーガンの提唱する「構成主義的発達理論」をとりあげます。
長期インターンに参加する目標、結果の分析の役に立てば幸いです。
成長の定義
所謂「優れた人」というのは大きく分けて2種類あり、
- 技術やスキル、体力といった業務遂行能力が優れた人
- 社会性や感情コントロールといった人間性が優れた人
と分けることができます。
ざっくり言うと、前者が専門家・プロフェッショナルに必要な適性で、後者が全体を見て調整するマネージメントに必要な適性です。
もちろん両方兼ね備えている人も多くいます。
本記事では、このうち後者の「社会性や感情コントロールといった人間性が優れた人」をターゲットにし、精神性の成長を対象としていきます。
ですので、【マーケティングの極意を学ぶ】だとか【プログラミングを学んでシステム構築ができるようになる】といったスキル部分の判断は触れませんので、インターン先の企業にフィードバックをもらってください(専門家にもらう方が確実です。)
成人発達理論とは
「発達心理学」というのは耳にしたことがあるでしょうか?
"フロイトの心理性的発達理論"や、家庭科の授業で「こどもの発達」としてとりあげられるもののもその一部です。
※カリキュラムによっては習わないかもしれませんが、、、筆者は授業でやった記憶があります。
これらは幼児期、子供の間の心理・社会性の発達について述べた物ですが、大人になってからの精神性の成長をまとめたものが「成人発達理論」です。
子供が新生児から乳児・幼児を経て思春期へと段階的に発達していくように、大人の精神面も段階的に進むだろう、ということが立証されております。
しかし、大人の心の成長は身体的に顕著な変化を伴うわけでもなく、また年齢によって成長すると言うわけでもないため、様々な理論が生まれています。
今回は、そのなかでも、最も包括的に成人の精神面の発達を考察できる理論として評価を得ているとさせる、ロバート・キーガン による「構成主義的発達理論」に焦点を当てていきます。
欧米でも積極的にリーダーシップ教育やマネジメントの研究で活用されているようです。
構成主義的発達理論
構成主義的発達理論は、字義通り、構成主義と発達理論を組み合わせたものです。
それぞれ、
構成主義:人は、経験そのままを受け入れるのではなく、自己の解釈によって独自に構成して受け入れる
発達理論:経験の解釈力は、時間の経過や個人の意識によって、より複雑なレベルに段階的に発達する
という理論を組み合わせたものになります。
「自分が見聞きしたものをどのように受け入れるか」を判別できれば、発達段階を分類できるのではないか?という理論ですね。
この構成主義的発達理論では、この発達段階を「主観と客観の境界面」の位置で判断できると提唱しました。
有り体に言えば、主観的な判断を減らし、ものごとを客観的にとらえられるほど「大人」である、ということです。
この発達段階は5段階に分けられています。それぞれみていきましょう。
発達段階1 (直感段階):幼児期
おそらく皆さんはこの段階を卒業しているはずです。
この段階は幼い子供に見られ、自分の直感や欲求を客観しできず、それらにのみ基づいて行動します。
また、一つのアイデアを長時間保てません。例えば、「いないいないばぁ」をされると本当にいなくなったり現れたりする、と感じる段階です。
発達段階2 (自己至上段階):七歳ごろ〜思春期、一部成人も。
この段階になると、物質社会を客観的に判断できるようになります。
例えば、街を見ると大きい車や小さい車もあるが、それは近くにあったり遠くにあったりするからであり、実際にはサイズは変わっていない、という遠近感を認識できるようになります。
また、このころから好きなもの・嫌いなものといった自分の価値観を時間が経っても保持し続けることができ、他人は別の価値観を持っていることも認識できるようになります。
ただし、行動は自分の興味や欲求に基づいており、他者への共感や同情といった感情はまだ芽生えません。
自己中心的であり、ルールも厳しい罰則がある場合のみ恐れて従いますが、そうでなければ従う必要性を感じません。
発達段階3(社会化段階):思春期後半〜大多数の成人
この段階では、他者を自分の欲求を満たす手段としてのみで判断することはなく、他者のために自分を抑え込めるようになります。
他人の感情を理解し、自分が所属する組織や社会の一員として、期待される役目をはたそうとします。
※ここでいう組織とは、家族、学校や友達グループ、サークル、地域、会社など広い意味です。
個人的な欲求よりも、組織の欲求を優先して貢献することができます。
また、他社からの評価によって自尊心を構築する傾向があるため、親しい人や組織の期待に応えることに積極的です。
一方で、他社からの期待や社会的な役割・地位に応えることで自己形成をしているため、"自分自身"という概念に乏しく、
自分にとって大切な人や組織の価値観が衝突していまうと精神的に引き裂かれてしまい、自分で決断できなくなってしまうことがあります。
発達段階4(自己主導段階):一部の成人
第4段階では、発達段階3までの全ての価値観を持ちつつ、その上で自分の所属組織や他者の関係を客観視できるようになります。
第一、第二段階では自分の欲求が主観であり、第三段階では他者の意見や期待が主観でしたが、第四段階ではこの他者からのみられ方を客観と捉えられるようになります。
自己アイデンティティが確立しつつ、さまざまなルールや意見を客観的に捉え、それらが対立しても精神的に引き裂かれることなく自己の判断に基づき冷静に調整する力があります。
この段階の人は、周りの意見を客観的に参考にしつつ、振り回されずに自己の新年によって独創的に規範を定め、その自ら定めた規範を守るために闘う力と責任感があります。
まさに、危機や変換機を迎え、乗り越えようとするグループのリーダーにふさわしいでしょう。
なお、自分の価値観を追求する志向が高く、あまりに自分の価値観から遠く離れた価値観や概念について正しさを検討するのは難しいようです。
発達段階5 (自己変容段階):ごく一部の中年期以降の成人
最終段階です。
第5段階に至るには、第一〜第四段階の全ての資質を供えつつ、同時に自分自身の限界を認識する必要があります。
この段階に至ると、自分以外の他社や外部の組織を、自分以外の別のシステムとして見るのではなく、より包括的な共通点をみつけ、大きな一つのシステムとして捉える力を持ちます。
物事を二極化して捉えることは少なくなり、中庸の概念を持って捉えるようになるでしょう。
第5段階に至ると、数多くの対立するグループに対して、みんなが納得できるような、根底にある重要な規範を示す力があります。
あくまでこれは一つのフレームワークですが、例えば宮澤賢治の「雨ニモマケズ」に表せられた生き方は発達段階5であると言えるでしょうね。
リーダーシップと成人発達段階
キーガン曰く、状況が複雑化の一途を辿る現在の様々なリーダーシップ課題に対処するには、発達段階4(自己主導段階)が最低限必要不可欠としています。
第4段階のリーダーは、自己の価値観を確立し、それに対する責任をはたす覚悟ができている状態、自己制御力があり決断やその結果への責任をはたすことができるでしょう。
とはいえ、大学生のうちから発達段階4に至るのはレアケースです。
アメリカの陸軍士官学校で行われた、学生の成人発達に関する長期調査によると、大学入学時点で第二段階もしくはそこから第三段階への移行期であり、大学生活を通して第3段階を完了することが目標となっています。
成人発達段階は大人になれば自然と第5段階まで成長できると言うものでもありませんし、大人でも大多数は第三段階とされています。
より成長をしていくためには、様々な経験を経る中で、主観と客観をコントロールする意識をもち訓練をする必要があるでしょう。
まとめ
成長発達段階は5段階に分かれ、次のような行動様式をとります。
- 発達段階1 (直感段階):本能のままに行動する
- 発達段階2 (自己至上段階):罰則が強いルールには従う
- 発達段階3(社会化段階):ルールや期待に応えようとする
- 発達段階4(自己主導段階):周りの意見を客観的に捉えつつ、自らの意見を通す力がある
- 発達段階5(自己変容段階):自分の限界を捉え、二極化しない多様性を認め、根底の要点を見出すことができる
「人間的に成長する」ことは、上で述べた成人発達段階を進めることとして表せます。
長期インターンシップは必ずいい経験になると思いますので、その経験をどのように解釈し、構成し、受け入れるかと言った部分まで意識すると今よりさらにリーダーシップを磨き、一つ上の段階へ近くことができるでしょう。
まずは、自分が今どの段階にいるだろうか?と考えること自体も、自分を客観視することにつながるため、この記事を読んだ方は自分の経験を振り返ることから初めてみても、これからのインターンシップや自己分析にもきっと役に立ちますよ
CheerCareer掲載中のリモートでもできるインターンシップはこちら
https://cheercareer.jp/search/offer_remoteintern
CheerCareerでは、スキルだけではなく社会人としてのマインドセットのためのセミナーも多く開催しています。
成長とは?と悩んだら是非参加してみてくださいね
https://cheercareer.jp/skillup
============
参考文献
田村次郎 渡邉竜介 渡邉理佐子、
日本の大学におけるリーダーシップ基礎教育の科学的効果検証:ハーバード大学ロバート・キーガン教授の成人発達理論の視点から(2019)