市況分析 2019.11.08
今から気をつけるべき?老後の収入について、世界各国で比較しました
CheerCareer会員の方々は新卒、ないし第二新卒の方が多いので
退職後、老後についてはまだ考えたこともない!という方が多数かと思います。
むしろ日本では、世界トップの少子高齢社会に突入しており
老後以前にバリバリ働いている段階での年金や社会保障問題を耳にすることの方が多いのでは無いのでしょうか。
実際、日本経済新聞の11月3日20:00(電子版、11月4日朝刊)に
[日本の年金、37カ国・地域中31位 米社、持続性に疑問](https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191104&ng=DGKKZO51768110T01C19A1NN1000)
という記事が掲載されました。
持続性に不安がある、というのはやはり国内外で相違ないようですね。
一方、年金の評価で一位をとったオランダは、
昨年7年ぶりにデンマークを下し一位に返り咲いてから
その地位を継続しています。
昨年、オランダの投資資産管理会社である*caceis*が[投稿した記事](https://www.kasbank.com/en/about-us/news/2018/the-netherlands-has-the-best-pension-system-in-the-world/])では、
一位になったものの持続性のスコアでは2位のデンマークに負けていることを取り上げ
変わりゆく労働市場や寿命の増加などの背景から将来的に盤石とは言えない、とまとめています。
2019年の持続性のスコアはデンマーク:82.0、オランダ:78.3、日本:32.2ですので、
ダブルスコアでも改善すべき、と考えるところが1位たる所以でしょうか。
細かい数字が気になる方は下記参考文献よりどうぞ。
※記事中の数字は2018の情報なので数字は異なります。
さて、年金はあくまでリタイア後の収入の一部ではありますが、
様々な制度のある世界の国々ではどんな展望を持っているのでしょうか。
前置きが長くなりましたが、本題はここから。
リタイア後の収入の展望と現実についての統計です。
## リタイアとの向き合い方。
退職後の生活がバラ色の生活と言われるのにはちゃんと理由があります。
退職を、キャリアを築くことに成功した先に迎えられる報酬、と捉えることはできるでしょう。
しかしながら、それは常に簡単というわけではありません。
退職後の楽しみは、"ただしお金があること"と続くことはよくあることです。
さて、今回は[Raconteur](https://www.raconteur.net/infographics/global-attitudes-to-retirement)の
世界の退職への向き合い方から、退職後の収入の予想と現実について比較してみました。
大きな画像はこちら
http://res.cloudinary.com/yumyoshojin/image/upload/v1/pdf/retirement-legacy-2019.pdf
## 国ごとの収入の予測
投資資産管理会社の[Schroders](https://www.schroders.com/en/media-relations/newsroom/all_news_releases/schroders-global-investor-study-2018-people-significantly-underestimating-cost-of-living-in-retirement/)が30カ国22,000人の投資家に対して行った国際調査によれば、
退職後の収入(年金、企業年金など)が予想よりも少なくなることはよくあることだそうです。
55歳以上でまだ在職中の時に、退職後の収入が現在の給与の何%になるか予想してもらい、その後実際にはどのくらい受け取れたのかを調査した結果が次の表です。
| 国名 | 予想 (対給与[%]) | 現実 (対給与[%]) | 差[%] |
|: |: |: |: |
| ポーランド | 103 | 56 | -47 |
| 日本 | 81 | 37 | -44 |
| インドネシア | 105 | 65 | -40 |
| チリ* | 93 | 57 | -36 |
| 香港 | 80 | 44 | -36 |
| ロシア* | 66 | 32 | -34 |
| シンガポール | 67 | 42 | -25 |
| 韓国 | 67 | 45 | -22 |
| 南アフリカ | 80 | 59 | -21 |
| ベルギー | 75 | 54 | -21 |
| オーストラリア | 71 | 52 | -20 |
| スウェーデン | 83 | 66 | -17 |
| フランス | 78 | 61 | -17 |
| アメリカ | 74 | 58 | -16 |
| ブラジル | 88 | 74 | -14 |
| スイス | 68 | 55 | -13 |
| イギリス | 66 | 53 | -13 |
| 中国* | 80 | 67 | -13 |
| カナダ | 71 | 61 | -10 |
| デンマーク | 74 | 68 | -6 |
| イタリア | 80 | 74 | -6 |
| オランダ | 75 | 69 | -6 |
| スペイン | 73 | 68 | -5 |
| ドイツ | 67 | 65 | -2 |
| タイ* | 66 | 64 | -1 |
| オーストリア | 64 | 67 | 3 |
| インド | 71 | 96 | 25 |
| ポルトガル | 46 | 72 | 26 |
| 台湾* | 68 | 117 | 49 |
*** は集計対象が少ない国 **
退職する際に十分なお金があるかどうかは、どこの国であっても共通の問題です。
企業年金を受け取るサラリーマンのうち51%が、自分たちの思い描く理想的な退職後の生活を送るのに
十分なお金を得られないのではないかと不安を抱いています。
もちろん、どんな法則にも特記すべき例外があります。
例えばインドでは、退職後には予想よりも良い結果になることがままあります。
在職中に予想した、退職後に十分な生活をするのに必要な額は給与の71%という数値にたいして、
退職後に得る所得はそれよりもずっと多い96%となっています。
## 退職後には一番何をしたいか
働いている時と定年退職したときで、世界はガラリと変わります。
多くの人は、退職後の自由な時間で次のようなことをしたいと考えています。
- 旅行: 60%
- もっと友人や家族と過ごす: 57%
- 新しい趣味に費やす: 49%
- ボランティア: 27%
この統計では、イタリア、アメリカ、オーストラリアの**59%の被雇用者**がリタイア後も何かしら仕事を続ける必要があると考える一方で、
オランダでは退職後に働き続けようという考えをしている人はたった32%となりました。
これは、オランダの年金システムが一つの理由でしょう。先述の通り、オランダの年金は世界一です。
## 退職の考え方を変える
退職後のリアル、というのは国ごとに、そして世代ごとに変化を続けています。
今日では、先進国の65歳以上の人口の割合はたった15%ですが、2050年には2倍以上になると予想されます。
なお、[日本の65歳以上の人口割合は28.4%、2位のイタリアの23.0%を引き離し世界一位です](https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49851150V10C19A9MM8000/)
今40代の人は、退職した親と自分の子供の両方を同時に面倒を見るため**サンドイッチ世代**と言われることもあります。
平均寿命の改善によって、人は愛する人とより長い時を過ごすことができるようになりました。
しかし、そんなに長生きする余裕をもつことができる未来はくるのでしょうか?
ちょっと暗いまとめになってしまいましたが、
昨今の日本、そして世界情勢を考えれば
数十年後に我々が迎えるリタイア後の生活は
間違いなく現状と大きく変わっていることでしょう。
#### 参考文献
VISUAL CAPITALIST - Visualizing Global Attitudes Towards Retirement
https://www.visualcapitalist.com/global-attitudes-towards-retirement/
caceis investor services - Dutch pension system rated best pension system in the world
https://www.kasbank.com/en/about-us/news/2018/the-netherlands-has-the-best-pension-system-in-the-world/
MERCER - Melbourne Mercer Global Pension Index 2019 (MMGPI)
https://www.mercer.com.au/our-thinking/mmgpi.html
Raconteur - Global attitudes to retirement
https://www.raconteur.net/infographics/global-attitudes-to-retirement
Schroders - Schroders Global Investor Study 2018: People significantly underestimating cost of living in retirement
https://www.schroders.com/en/media-relations/newsroom/all_news_releases/schroders-global-investor-study-2018-people-significantly-underestimating-cost-of-living-in-retirement/
日本経済新聞 - 日本の年金、37カ国・地域中31位 米社、持続性に疑問
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51768110T01C19A1NN1000/
日本経済新聞 - 65歳以上人口が最高28.4% 7人に1人が75歳以上
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49851150V10C19A9MM8000/