第一人者を支える飽くなき探究心~竜王戦第5局,4五銀について~(エスプール内定者:内藤さん)

2017.12.19

第一人者を支える飽くなき探究心~竜王戦第5局,4五銀について~(エスプール内定者:内藤さん)

お久しぶりです!エスプール内定者の内藤です! 

さて、今月の5日ですが、将棋界では羽生善治先生が見事永世七冠の偉業を達成したという大きなニュースがありましたね!折角なので今回は、羽生先生が永世七冠となった対局の中から自分が感じたことについて、背景とともに軽く書いてみたいと思います。 

今年の羽生先生は、決して順調とは言えませんでした。20代の若手棋士の挑戦に対して、連続して2つのタイトルを失冠してしまいます。棋界の勢力図が塗り替えられるのでは…。そんな声がささやかれる中で、羽生先生は竜王戦の挑戦権を、念願の永世七冠に向けて大事な挑戦権を獲得します。相手は渡辺竜王、これまで羽生先生も2度退けられた強敵です。 

今季の竜王戦は、ここまで4局を終えて挑戦者の羽生先生の3勝1敗。大事な一局で用いられたのは、5日前に渡辺竜王相手に完勝を収めた作戦でした。後のない渡辺竜王も新構想をぶつける中で指されたのが、タイトルにも書いた37手目の「4五銀」です。 
この手は、定説の中では成立しない攻撃の一手です。自分の攻撃以上に相手の反撃が厳しいとされたために、検討室では驚きの声も上がりました。しかし、局面が進んで行くにつれて羽生先生は優位を築き、緩むことなく勝利、永世七冠の称号を獲得しました。 

将棋界は、ソフトの飛躍によって大きく変化していきました。昔の定跡が通用しなくなってしまうことも多々あります。ソフトを用いた研究は当たり前になり、時代の流れの速さについていけず、若手に敗れるベテラン棋士も少なくありません。 

しかし、羽生先生は、時代についていくだけではなく、その上でなお探究心を失わずに将棋と向き合っています。今回の4五銀は羽生先生の探究心と歩んできた道の象徴とも言えるのではないでしょうか。定説では無理とされた手を「やってみないと分からないので」と採用し、勝利を収めたこと、これこそが羽生先生が常に将棋界のトップを走り続る原動力なのではないかと思います。 

最後に、永世七冠獲得インタビューの中の羽生先生の言葉を紹介して終わりにしたいと思います。 

「盤上の世界は日進月歩で進化していく。(中略)常に最先端のところを探求していくという気持ちでいます。」 

きっと、まだまだ羽生先生はトップ棋士であり続けるだろう、そう期待せずにはいられません。改めて、永世七冠獲得おめでとうございます!
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