「大手に入社すれば一生安泰」「会社が自分の人生を守ってくれる」そんな「大手=安定」という概念はもはや時代遅れ。AIの発達、グローバル化、働き方改革……。様々なキーワードを軸に、世の中は目まぐるしく変化しており、その変化の先を完全に予測することはもはや不可能です。そんな時代だからこそ、就職を控えた学生が自らの将来、キャリアを安易に考えてしまうことは非常に危険であると言えそうです。
新時代を生き抜くために必要なスキルは何か?
活躍し続けるためにはどのような思考が求められるのか?
今回はベンチャー業界のトップを走り、日本を代表するdely株式会社、株式会社 FiNC Technologiesよりベンチャー経営者の2人をお招きし、様々な切り口から「これからの働く」について考えるトークイベントとして、6月26日(水)にパッションナビ(現:CheerCareer)主催の就活イベントを開催しました。自分のキャリアに悩む学生や、新卒でのベンチャー企業への就職を考えている学生には必見のイベントレポートです。

未来の”孫正義さん”とともに働くという「選択」

少子高齢化が深刻化し、ますます人材の「売り手市場化」が昨今の新卒市場。そうした環境で、大企業という選択肢もある中で「ベンチャーで働く」とは、どのような選択肢になのでしょうか?
「ベンチャーで働く」というキャリアを選ぶことによって、トップと近い距離で、つまり未来の”孫正義さん”の近くで働けるという、貴重な経験ができると堀江氏は語ります。
堀江氏:「ピラミッドの大小にかかわらず、できる限り司令塔の近くにいる選択をするべきでしょう。トップの間近で、失敗や成功の糧を経験することが人生の資産になります。今、ベンチャーで事業を興しているのは『”孫正義さん”を超えたい』という人間です。そんな人間と働く経験にはなによりも価値があるし、大企業では絶対に得られないのでは」
もう1人の講演者、溝口氏は自分の人生をイメージしたとき、自分が今後どう成長していくかを考えるべきだといいます。
溝口氏:「ベンチャーに行くのか、大企業に行くのか、あるいは起業するのか。『どの選択だと自分は最も成長するのか? 』、これを若いうちに考えることが大切です」
溝口氏:「好きなことを見つけることができて、そしてめちゃくちゃな情熱を傾け続けることができれば成長しないはずがない。ただそこで難しいのは、情熱を持ち続けられるものを見つけること」
情熱をもてるものを見つけること、その上で上司の重要性について強調します。
溝口氏:「ひとつ解像度高いアドバイスをすると、”最初の上司”の存在は重要です。最初の上司が素晴らしく、能力が高く、自分がその人を尊敬できると、『その人に追いつきたい、褒められたい、役に立ちたい』そんな感情が湧いてくる。この感情と先ほどの『情熱』はかなり近しいもの。じゃあ、どんな上司が素晴らしいかといえば、堀江さんの言葉を借りれば、未来の孫正義さんを目指すような人だと思う」

ベンチャーを選ぶ基準は「マーケット」と「社長の本気度」

続くトークテーマは「どのようなベンチャーを学生は選ぶべきなのか」。
日本の起業件数は年間5万件。多くの企業が生まれる中で、学生はどのような基準で「よい」ベンチャー企業を見抜き、そして選ぶべきなのでしょうか。
堀江氏いわく、伸びるベンチャー企業を見極めるときの基準は2つ。
 ・どのようなマーケットで戦っているか
 ・社長が本気かどうか
堀江氏:「仮に孫正義さんでも、『駄菓子』という小さいマーケットでは、その業界のアッパーで止まってしまうでしょう。つまり、事業とマーケットに僕らは生かされているのであって、そのトップラインまでしか成長しない。だから、努力の反映率を高めるためにもでかいマーケットを選択するべきです」
溝口氏は伸びるマーケットについて、2つの共通項を説明していました。
溝口氏:「過去の歴史をたどると、成長する会社は新しいデバイスやテクノロジーが登場したときに現れています。スマホやPCといった新しいデバイスと、AIのディープラーニング、ブロックチェーン、5Gなどの新しいテクノロジー。デバイスとテクノロジーが新しい社会を作ってきました。その意味で、大きな市場であると同時に、新しいデバイスとテクノロジーで挑んでいる会社は成長するはずです」
社長に先見性があるのはもちろん、会社を選ぶ学生にもマーケットを見極める力が必要です。そして、伸びるベンチャー企業を見極めるもうひとつの条件として、社長の本気度の重要性について堀江氏は説いています。
堀江氏:「例えば、ベンチャーの経営者を1000人集めたら、950人くらいはおそらく本気でやってないと思う。本気でやっているということは、日々悩んで、本当に絶望感を味わうこと。僕は、自分よりも能力高い人を多く見ているから、自分の無力さなどを常日頃から感じて、毎日惨めな思いをしている。それでも、その現実を跳ね返そうと必死でやっています。結局、その苦悩を10年、20年続けられる経営者かどうかで、会社が成長するか潰れるかが分かれるんじゃないかな」

期待度の高い学生は、圧倒的ポテンシャルがあること

2人のベンチャー経営者が考える、「いっしょに働いてみたい」「貴重なリソースを使っても育てたいと思わせる学生」とは。
堀江氏:「将来の幹部になりうる学生と一緒に働いてみたい。僕や溝口さんは1兆〜数兆円規模の会社を目指しているので、ただ優秀な学生よりも経営者に近いレベルでの働き方を期待できる学生であれば、僕は時間を割いてみたいと思う。ただ優れているだけではダメ。『人間力、能力、リーダーシップ』のすべてが揃ってないと、自分はあえて時間を割かない」
その一方溝口氏は、大学生ぐらいの年齢では個人間に大きな能力の差はないと主張します。
溝口氏:「僕らは一流の大手企業に圧倒的に勝ちにいこうと思っている。だから新卒大手企業を選んだ学生よりも、一流であってほしい。でも正直言うと、皆さん(大学生)の年齢だったら、大したパラメータの差はないですよ」
学生段階でパラメータの差がないと考える溝口氏にとって、期待度が高い学生の基準はどこにあるのでしょうか。
溝口氏:「学生の頃は差がなくても、30歳になったときに、世の中に大きなインパクト与える人もいれば、そうでないやつもいる。22歳くらいのタイミングにおいては、圧倒的なポテンシャルを持っていてほしい。このポテンシャルとは、いろんな局面で毎回誰よりも集中して、吸収して、成長するということ。僕はすべてのつながりを『成長するやつかどうか? 』、『成長する機会を得られる人かどうか? 』で見ています。つまり、僕が一緒に働きたい人は、毎日吸収して、毎日成長するやつ」

下手な自信はいらない。自分の名前以外でタグ付けしろ

トークも終盤。最後のテーマは「学生時代に何をしたらもっと自信を持って選択肢を増やせるのか」。
堀江氏:「みなさん、僕が堂々と話していて、自信満々に見えるかもしれません。でも毎日疑心暗鬼の連続です。”孫正義さん”を超えるなんて高い目標を達成するなんて、本当にしんどいことだし毎日苦しい。でもその不安がなければ努力できない。僕は自分を信じていないから、常に成長しようと努力している。

自信はないけど『絶対やってやる、成し遂げてやる』という覚悟だけは決めている。むしろ、何も成し遂げてない時点で自信とかあったらやばいよね」
堀江氏は常に自分自身にプレッシャーをかけ、それに反発するように努力しているため、「驕り」のような感情は一切ないという。溝口氏も日々の恐怖、葛藤について語ります。
溝口氏:「僕も毎日すごい葛藤があります。自分が語った夢、目標を信じてくれる人たちがいるけど、それを実現できなかったら彼らの期待を裏切ることになる。そんな恐怖が元来怠け者だった僕を駆り立て、奮い立たせてくれる」
次に「自分の選択肢を増やす方法」について堀江氏は、自分自信に能力のタグ付けをしろとアドバイスしました。
堀江氏:「自分の選択肢を増やす方法は簡単です。自分が人のためにできることを一個でも秀でられれば、いくらでも需要はある。例えば、『〇〇と言ったらあいつだよね』となれれば、日本中から引き合いがある。つまり、自分の名前以外で『タグ』があればいいよね。自分のタグを増やすために時間を使うべき」

学生はまだ若いから選択肢は少ない。意思決定は広く、多く

続いて、学生から自己成長やキャリアに関しての質疑応答の時間に移りました。
─キャリアを迷ったときに選択する基準としてもっとも優先することはなんですか?
溝口氏:迷ったときは、自分の成長を見込める意思決定をするべき。人間は弱いから、楽な方に流れがちだけど、迷ったときは『どっちが俺成長するかな? 』と考えるようにしています。例えば、究極の選択って人生でだいたい10回ほどあると思っていて、毎回の選択で自分がもっとも成長する意思決定を続ければいい。 もし、20〜30年後の自分の人生がつまらなかったなら、自分に負けて、楽な方に流れた結果なんじゃないかな。
堀江氏:意思決定のときは、2つどころか、むしろ3桁くらい選択肢を挙げるようにしている。自分の思考に留まっていると考えられないことってけっこうあるはずで。すべての選択肢ちゃんと網羅できているか、立ち止まって考えるべき。
溝口氏:自分の枠だけで考えないことが大切だよね。みんなはまだ20年くらいしか生きてない。まだ若いし、見てきた世界も狭いし、周りの交友関係も狭いはず。その中で意思決定をするのは危険じゃないかな。とにかく目線を広げることができるのが理想で、幅広く誰かに会うために勇気を出して、自分から機会を手に入れていく必要がある。
─伸びる若手の特徴があれば教えてください。
溝口氏:地頭がいいこと。いろんな事象に触れたときにそれを構造化し、パターンや法則、フレームワーク化して認識できる人かな。ただし、これは行動量に比例する。行動量がある人は構造化とかフレームワーク化とかできる人だと思っている。

あとは学生ならば、『諦めない、投げ出さない、逃げない、やめない』ことは大事。こういう人には大きな仕事を任せやすいし、僕も機会を与えたいと思う。
─最後に、学生に向けてメッセージをお願いします。
堀江氏:もっと自意識過剰でいいよ。大事なのはそれを成り立たせるプライド。僕も自意識過剰だと思う。自分は絶対に世の中でNo.1の経営者になる、っていつも思っていて、それを実現させるために葛藤している。異常な自意識を持って、それを実現するために必死に頑張るのは、とても人間臭くてかっこいいなと思うな。
溝口氏:人生は選択の総和。毎日暮らしてきた選択、一つ一つの積み上げが今の自分を作っている。今の自分が納得できなくて「もっと素晴らしい人生があったんじゃないか? 」感じるなら、自分の殻を破って選択の質をあげていくべきだね。