INTRODUCTION

2022年11月22日、「第3回 CheerCareerAwards2022」が開催され、魅力的な採用活動を行っているベンチャー企業16社がさまざまな賞を受賞しました。
エリアにとらわれず、地域の採用に貢献している企業に贈られる「Best Local Recruiting賞」の中でも「最優秀賞」に選ばれたのが、設立9年目で年商130億円を突破し、いま大注目のITベンチャー企業、バレットグループ。
2021年に広島の離島・江田島に新拠点を設立するなど、採用に関するユニークな取り組みも盛りだくさん。そんな同社の企業風土や地方活性化の取り組みなどについて、バレットグループ株式会社 取締役 後藤 衛(ごとう まもる)さんにお聞きしました。

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「人を育てられる人を育てる」が人材育成のモットー

今回、「第3回 CheerCareerAwards2022」で「Best Local Recruiting賞」を受賞したバレットグループは、2013年創業のITベンチャー企業。たった4人でスタートした会社でしたが、2021年時点のグループ売上132億円、社員数270人と、急激な成長を遂げてきました。
“人とテクノロジーで世界をつなぐ”を理念に、広告事業や人材事業、システム開発事業を展開。最新テクノロジーを取り入れながらも、人と人とのやりとりに重きを置いて事業活動を行っています。
後藤さんはバレットグループの企業文化について、次のように語ってくれました。
後藤後藤さん
採用・人材育成で何よりも大事にしているのは『人を育てられる人を育てる』ことです。『1,000億円の価値のある企業になる』という目標に向かって、経営層やマネージャー、リーダーといった役職をずっと同じ人が続けるのではなく、次の世代を育て、託し、さらに次世代のエースが次の世代を育てるというサイクルを重視しています。
創業者に聞く!急成長ITベンチャー・バレットグループの理念と文化~広島の離島での地域活性の取り組みも

内定者も新卒採用に携わることで成長

「人を育てられる人を育てる」という考え方は、入社前の内定者の育成にも生かされています。内定者が、1度は内定者研修で採用チームに加わり、バレットグループの一員として、就活生に向けた情報発信をはじめとする採用活動に携わっているのです。
後藤後藤さん
就活中の学生は、企業のことを感覚的に見極めようとします。ところが、自分が内定者という立場になって、就活生時代に感覚的に『いいな』と思っていたものを学生さんに提供しなければならないとなると、持たなきゃいけない会社の情報量が一気に増えるんですよ。

内定者の視座も上がるし、会社のことをより深く理解するという意味でもすごく価値があるので、チャレンジとして採用活動に携わってもらうことを大事にしています。
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2021年、広島の離島に「COCODEMO江田島ラボ」を設立

地方移住者や地方で活躍するIT人材を増やすことで、地方創生や地域活性化にも取り組んでいるバレットグループ。2021年には広島県の離島である江田島に「COCODEMO江田島ラボ」を設立しました。
多方面から注目を集める「COCODEMO江田島ラボ」は、どのような経緯で誕生したのでしょうか。
バレットグループはエンジニアの割合が多い企業にもかかわらず、市況的にエンジニアの採用が難しくなってきていたといいます。そんなとき、バレットグループがすでに仙台、新潟に展開しているのを知った広島県庁の職員から「次の国内の展開拠点として、広島を選択肢にしていただけないでしょうか」という連絡があったのです。
それを受けて、コロナ禍ということもあり、「エンジニアを組織していく拠点として、地方でのワーケーションの拠点として、広島を選択肢として考えてもいいかもしれない」と感じたそう。
ところが、既存のメンバーを現地に派遣して新拠点を立ち上げることは想像できなかったため、県庁職員には「ラボの責任者となる人が採用できたら立ち上げます」と答えたといいます。
すると、県庁からその話を聞き「何とかしてIT企業を誘致したい」と考えた江田島市の職員や関係者が、個人SNSで募集するなどした結果、ラボの責任者候補者が浮上。面談をしたところ「ぜひラボの立ち上げをやりたいです」となったので、「COCODEMO江田島ラボ」の立ち上げが決まりました。

新事業・新拠点の立ち上げは「情熱リーダー」がいてこそ

バレットグループが地方に展開するきっかけは「人」。根底には「いい仲間が集められるのであれば、その地域に行く価値がある」という考えがあるといいます。
後藤後藤さん
仙台も新潟も広島も、行ってみてたくさんの仲間と出会っていますし、それによって生まれた仕事もたくさんあります。地方展開は、企業にとっては少しハードルが高いですが、いまは採用が難しい市況なので、そこに行くことで採用がうまく回るなら、地方展開も十分選択肢になると思っています。

何の事業をやるにしても、どこに拠点を立ち上げるにしても、事業や会社を盛り上げて引っ張っていくことのできる『情熱リーダー』がいないと無理なんですよ。だから、取り組みのトップとなる人が自分から『やりたいです』と言ってくれないと何も立ち上がらないと思っています。
今後展開する新事業についても、国内外の新拠点の開設についても、この考えがベースにあるのは変わらないそう。
後藤後藤さん
例えば岡山出身の方がいて『将来岡山で働きたいのですが、岡山拠点を立ち上げられますか?』と聞かれたら『もちろんできるよ』という会話になります。大切なのは、本人が『絶対やりたい』『絶対やるぞ』と思えるかどうかですね。

東京と連携して開発も行うようになった江田島ラボ

「COCODEMO江田島ラボ」ではどのような活動を行っているのか、具体的な取り組みについても聞いてみました。
「もともと江田島のラボは、地域貢献活動を行うCSR拠点として、また先進技術にチャレンジする研究開発拠点として立ち上げたんです」と後藤さん。
売上をつくるために立ち上げた拠点ではなかったので、最初から小学校への出前授業やラボ内でのプログラミング教室などの地域貢献活動を行っていたそうです。
後藤後藤さん
当初は現地スタッフが1人しかいなかったので、人手が足りなくなって、東京から江田島へプログラミング教室を手伝いに行った社員が、現地のロケーションに惚れこんでしまって。結局奥さんを説得して江田島に移住して、子どもも生まれて『今最高に幸せです』と言ってますね。
立ち上げ当初は、エンジニアを増やしていくためのきっかけになるような拠点として位置づけていた「COCODEMO江田島ラボ」ですが、2022年4月からやや方向性が変わったといいます。
後藤後藤さん
東京でシステム開発のお仕事をたくさんいただいているので、江田島のラボで生産もやることで、拠点をもっと盛り上げようと思ったんです。現在は、東京で仕事を獲って、東京のメンバーと江田島のメンバーが連携して開発するということをやっています。

反対に、江田島の周辺地域で仕事を獲ってきて、東京のメンバーが連動して動くケースも最近はかなり増えてきていますね。
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地域貢献が自分たちの成果にはね返ってくる

「COCODEMO江田島ラボ」では、「エンジニアの仲間を増やす」という目的にかなっていればどんな取り組みでもやっていいそうで、小学校の出前授業、プログラミング教室、セミナー登壇など、地域貢献活動を含めたさまざまな取り組みを行っています。
現地のメンバーも、一生懸命地域に貢献することが結果として自分たちの成果として跳ね返ってくると考えて活動にあたっているそう。基本的に「何でもやります」というスタンスで、「色んなこと積極的にやる会社」というブランディングができてきているので、行政からも声がかかりやすくなっているといいます。
後藤さんは、地方での活動は東京とはまた違った心構えが必要であることを明かしてくれました。
後藤後藤さん
東京にいると短期的に成果が出ることに投資していく感覚が強いんですけど、地方では回りまわって結果につながるという考えを持ったほうがいいですね。

ローカルラジオのスポンサーをやったり、市電やバスに広告を出したり、Uターン・Iターン採用につなげることを狙って、江田島市や広島市の住民にチラシを配ったりといった活動もしています。

東京では「競合」になる企業とも、江田島なら「協業」

チラシを配ると、直接採用にはつながらなくても、さまざまな反響があるそう。
後藤後藤さん
『江田島に空き家があるんだけど使ってもらえませんか?』といった連絡をもらうこともあります。『こんなに地域を盛り上げようとしてくれる人に協力したいです』という連絡が定期的にあって、地方はそういうところがいいなと思いますし、面白い取り組みだなと感じています。

地方での成功は、その地域の課題にどれだけ介入できるかがカギになりますね。
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企業同士の横のつながりも強く、バレットグループを含めた江田島のIT企業3社で「一緒に島を盛り上げよう」と手を取り合うような感覚なのだそう。東京であれば「競合」になってしまうような企業とでも、江田島では「協業」のパートナーになれるのです。
そういった関係性に「島を盛り上げたい」という想いの役所の職員や島民も飛び込んできて、みんなで一緒に季節のイベントを楽しむこともあるそう。

東京水準の給与で地方の優秀な人材を集める

江田島に先がけて、バレットグループは仙台と新潟に拠点を開設しています。そもそも、地方での事業展開が始まったきっかけは何だったのでしょうか。
バレットグループ初の地方拠点が、2016年に開設した仙台支社。東京でのIT系の人材採用の難易度が上がり始める中、「東京で獲った仕事を仙台で生産すれば、東京と同じ給与水準で仙台で採用ができる。そうすれば人も集まるのでは」と考えたのがはじまりだったそうです。
東京水準の給与で求人を出したところエントリーが殺到し、ハローワークが説明会を開催するくらいの規模で人が集まったそう。そのときに採用したメンバーが、いまでは仙台支社の中核メンバーになっています。
後藤後藤さん
感覚的に、仙台は東京に比べ15%ぐらい人件費が安いです。でも、当社は地方だからといって人件費を下げるのではなく、東京水準の給与を出して、地方の中で水準の高い人を集めるということをしています。これがすごくうまくいっていますね。

地方移住のハードルを下げるサポートも

地方で働いても東京水準の給与が得られるとなると、Iターン就職・転職希望者にはきっと魅力的に映るはず。実際のところ、バレットグループの地方拠点では、どのような人がIターン就職・転職をしているのでしょうか。
後藤さんは次のように語ってくれました。
後藤後藤さん
今のところ、Iターンをしなければならない状況にある人が、その地域で企業を探したら選択肢として当社が出てきて、話を聞いてみて『ここで働きたい』と思ってくれたというパターンが多いですね。

家庭の事情で瀬戸内に移住しなければならなくなって、移住先の島もすでに決まっていたにもかかわらず、同じ瀬戸内の江田島にバレットグループのラボがあるのを知って『バレットさんで働きたいと思ったから、移住する島を江田島に変えました』という人もいます。

やっぱり人間って、漠然と『やってみたいな』という興味があっても、『地元に馴染めるかな』『とはいっても土地勘ないしな』なんて考えて、なかなか踏み出せないことが多いじゃないですか。

でもいまは『1度現地に一緒に視察旅行をしてみませんか。色んな人紹介しますよ』というところからサポートできるので、地方移住のハードルが下げられると思います。行政の方も非常にウェルカムな空気感を出してくれますし。

東京にはない価値を感じられる地方でのビジネス

仙台、新潟、江田島と地方拠点を増やしてきたバレットグループ。地方展開してよかったことは、「選択肢が広がったこと」だといいます。
後藤後藤さん
バレット(弾丸)グループだけに『カラフルな弾丸で世の中の既成概念を撃ち抜くぞ』みたいなことを言っていますが、実際のところ、物理的に環境がないとできないことって多いじゃないですか。

例えば『地方から東京においでよ』というのはいつでも言えますけど、その逆は簡単にはいきません。あるいは新卒の社員に『情熱リーダーがいればやれるんだよ』とは言っても、前例がないと踏み出せないのが現実です。

でも、実際に地方展開をしたことで、事実としてそういうことをやっている会社だというひとつのファクトになります。

また、地方の行政の方々と接点を持つようになってくると、東京だけでビジネスをやっていると感じられないような価値をたくさん感じるんです。県庁の方が見込みクライアントとの橋渡し役になろうとしてくれることもありますし、ハートウォーミングな人脈の広がり方をしていくんですよね。
創業者に聞く!急成長ITベンチャー・バレットグループの理念と文化~広島の離島での地域活性の取り組みも

1,000億円の価値と影響力を持つ企業を目指して

バレットグループは目下、「2026年に年商1,000億円」という目標に向かって成長を加速させています。
日本国内にある約400万社の企業のうち、年商1,000億円を超えているのは、わずか900社ほど。誰もが知っているような有名企業が多数を占めています。さらに、金融など社会のインフラになっている企業も多く、もしその企業がなくなったら社会に大きな影響を及ぼす企業も少なくありません。
後藤後藤さん
我々が1,000億円にこだわっているのは、社会に対して影響力がある会社になりたいと思っているからです。グループ代表の小方が好きな言葉に『微力だけど無力ではない』というのがあります。

これからのグローバルな世界において、若い世代の生活が充実するよう、『社会の中で微力でもいいから、何かしらの影響力を持ちたいよね』と常々言っています。そう考えたときに、年商1,000億円の企業は多少なりとも影響力を持てると思うので、そのハードルを超えたいという想いでいます。

1,000億円と言うと数字が独り歩きしがちですが、それが本質ではなくて、あくまでも1,000億円の価値のある企業、社会に対して影響力のある企業になるための定量的な目標として『1,000億円』を挙げています。

1,000億円の売上があれば、当社のことを知ってくれる人が増えると思うので、我々が何かを発信したときにそのメッセージが伝わる相手も圧倒的に増えるはずです。
創業者に聞く!急成長ITベンチャー・バレットグループの理念と文化~広島の離島での地域活性の取り組みも

「創業メンバー」として価値を創っていきたい仲間、求む

これから非常にエキサイティングなフェーズに突入していきそうなバレットグループ。2023年 1 月に10 周年を迎えるのを機に、体制変更も行い、さらなる飛躍に向けた新たなチャレンジも視野に入れています。
「1,000億円の価値のある企業」をともに目指す仲間として、どのような学生を求めているのでしょうか。
「これからまさに第2創業期が始まるので、『創業メンバー』としてきてくれる仲間を求めています。『売上が100数十億の会社で、従業員が200人いて…』と、すでにあるものに期待するのではなく、自分たちで価値を創っていきたいと思ってくれるメンバーが増えるとすごく嬉しいです。
当社にジョインすれば、ここからの3~5年はもう圧倒的な経験ができるんじゃないかと思いますね」と後藤さん。
「職位が人を育てる」という考え方を大切にしているといいます。
後藤後藤さん
できる人にやらせるんじゃなくて、やりたい人にやってほしいんですよ。実際に、仙台支店の立ち上げは、新卒1年目のメンバーが仙台に移住して実現しました。

リーダーになったら、リーダー1日目の日に『どうすればマネージャーになれるんですか?』と聞くくらいの気概がほしいですね。メンバーとして十分頑張って、リーダーとしてやっていけるからリーダーになれるという考え方ではなく、『どうしたらリーダーなれるんですか?』っていう会話をしたほうが伸びしろがあるじゃないですか。

本気でやりたいと思ってない人には任せられないですし、最後は『本気かどうか』が問われると思っています。
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おわりに

創業から9年間、まさに「弾丸」のようなスピードで成長を遂げてきたバレットグループ。ただ、急成長の一方で、定量的な成果が見えづらい地域貢献活動や、数値化できない人との「つながり」を重視する企業風土が印象的です。
バレットグループは今後ますます、「社会に必要とされる企業」「社会に影響力を発揮する企業」になっていくでしょう。そんな環境に飛び込んだら、ワクワクするような未来が待っていそうです。
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記事監修