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#算数の問題を小説にする遊び プロローグ

2020.07.27

#算数の問題を小説にする遊び プロローグ

【問題】
弟は分速60メートルで歩いて家から図書館に向かいました。
兄は弟が家を出発して6分後に自転車で出発し、分速240メートルで弟の後を追いかけました。
兄が弟に追いつくのは兄が家を出発してから何分後でしょうか?
ーーー
このキーホルダーが何かって?
そうか。お前にこの話をしたことはなかったな。
そりゃあ、気にもなるよな。
別にどこに留めるわけでもなく、おれはこのキーホルダーをいつもポケットに入れている。
小さな小瓶にどこかの砂浜で詰めただろう砂が3分の1ほど。
文字も書かれていない無機質その小瓶は、小さな銀色のボールチェーンをつけて、おれのズボンのポケットにいつもしまわれている。
それは、蒸し暑い真夏の短パンの時も、真冬のUNIQLOの裏起毛のデニムパンツの時も同じだ。
この小瓶のキーホルダーが俺のポケットに常備されるようになったのは、今から3年くらい前。
あの日はたしか、梅雨が明けたばかりの7月。
いつも通り大学の授業に遅刻確実な、正午頃に目が覚めたんだ。毎晩夜中まで仲間とつるんでいたからな。
昼夜逆転で、ほとんど授業に出てなかったんだ。
あんただって同じだろ?理由もなく集まって、金もないから何もできない。
でも、信頼し合える仲間と一緒にいたら、携帯ゲーム機もイカした車もバイクも必要ないよな。
大学を卒業できたのが信じられない?そうかもな。でも卒業できた理由は簡単だ。

兄貴がいたから。

2つ年上の兄貴のおかげで、その年は大学の卒業も、甘酸っぱい恋愛も、ウソみたいな友情と金の出来事も、全部が上手くいったんだ。
ただ一つ失敗したのは、兄貴が死んだこと。あれは絶対に俺のせい。死んだ兄貴には「お前のせいじゃない。どっちみち俺は死んだんだから。変な責任感じるな。」って言われるんだろうな。でも、それも兄貴が死んじゃったら確認のしようもない。

大学の試験が近かったからおれは、大学に向かっていた。
正確には大学図書館。
前日に夜中まで酒を飲んでいたのもあって、頭痛が酷かったんだ。
いつもは自転車で行く道を俺は、分速60メートルほどの速さで歩いた。
家を出て、ちょうど6分後に兄貴は、俺が携帯を持っていない事に気が付いた。
兄貴はバイトに行きがてら、分速240メートルで自転車に乗って、俺の忘れ物を届けてくれた。

そうさ。本当なら、家から大学までの道のりで出会うはずだった。
俺たち兄弟は何分後に出会う事が出来たはずだったかわかるかい?

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